2018年12月第147号|4-1|あきない遠眼鏡(とおめがね)~実習の内容より日本語能力が役に立つ|

国会で、新たな外国人労働者の在留資格「特定技能」の論議に入るかどうかが審議されている最中、お客様の用事でフィリピンに同行しました。この件は、「特定技能」という資格に関係なく、従来からある「技術」という資格を念頭に、フィリピンの大学卒の人たちに着目した求人活動でした。

大学の先生を交えた会社のプレゼンと労働契約を一日目に終え、二日目は、来日にあたっての急ごしらえの日本語教育をお願いするための日本語学校訪問でした。

朝、ホテルに迎えに来てくれたのは、日本語学校を経営する法人のマネージャーのDさんでした。みずから運転する車で迎えに来てくれたDさんは殺人的な朝のラッシュの中、右に左にハンドルをさばきながら、一時間半の道中で「今ある自分の経験」を語ってくれました。

10年前に技能実習生として日本に渡ったDさんは、瀬戸内の港町の造船所で溶接工として学びながら、日本語をマスターし、帰国後その日本語能力を生かして実習生の送り出し機関に就職し、幹部となり、今は日本語学校のマネージャー(営業、広報)も務めているのです。

外国から来ている留学生のうち少なからぬ人が、自国と日本を結ぶ懸け橋的な職業についているとは、旧知のベトナム人通訳のHさんに聞いてはいたのですが、そのブリッジを体現するDさんの八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍にはあらためて感心させられました。

日本に追いつけ追い越せを目指している国々にはDさんのような人が多くいるのだと改めて感心したしだい。

日本語学校の入学早々の青年たちの前で、日本語であいさつするわけにもいかず、英語であいさつする羽目になった私は大いに恥をかいたことを最後に書き留めておきます。(何をしてきたんだか。まったく。)

税経センターグループ 顧問 新山 晴美

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