2020年4月第163号|4-1|あきない遠眼鏡(とおめがね)~中小企業はある意味、再生工場|

私は西鉄ライオンズの稲尾和久投手の大ファンだった。我が家にテレビもない時代、連投につぐ連投で1シーズン42勝という無茶な記録を打ち立てた鉄腕稲尾にあこがれ自分の心の中の生涯の背番号を24と決めた。そのライバルが南海ホークスの野村克也捕手である。2月11日、野村氏(以下、敬称略)が亡くなった。正直いってマスコミの取り扱いは、私が想像していたより大きかった。野村氏(削除)の人生(とくに幼少期)には心をうたれるものがあるし、戦後初めての三冠王という実績もすばらしいが、派手な奥様とのデレデレぶりも含め、性格は正直いって一般受けするかなと思っていた。だからここまでマスコミが大きく取り上げるとは思っていなかった。マスコミを少し見直した。

監督時代の野村の真骨頂は、「弱小チームが強豪に勝つ野球=頭を使う野球」であり、「野村再生工場」だったと思う。とくに「野村再生工場」は、中小企業の経営にとっても大事な教訓だと思う。大企業が優秀な人材を集めるのに対し、中小企業はその残りの人材で勝負しなければならないのだから。大企業のように人材のムダ使いはできないのである。ケガに苦しんだ選手、盛りを過ぎてしまった選手、なかなか芽の出ない選手を観察し、これしかないという生かし方を見つけ出し、選手にそこに気づかせるという手法は中小企業の経営者こそ学ぶべき点ではないだろうか?

性格がよいとは決して言えないながらも、マスコミが多く取り上げるのはそういうところへの共感だろう。金で事を決められる球団にいたら、なしえなかった芸当だ。

中小企業だから「ボヤキ」が入るのは致し方ない。ボヤキながらも「いつかやってやるぞ。」と、配下の社員たちの「良い所探し」をしていきたいものだ。

税経センターグループ 顧問 新山 晴美

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