雨宿りに入った書店で、一冊の本を買った(悪い癖だ)。本の題名は「『未来の地図帳』人口減少日本で各地に起きること」(講談社現代新書)。週刊誌を手に取る感覚で読み始めたがこれがなかなか面白い。
「少子高齢化の進行」はあらゆる局面で枕言葉に使われて、耳にタコができている感がある。しかしこの本の冒頭の小見出しを追うと「少子化を傍観した平成」「人口減少は2段階で進む」「地域差が際立ってくる」「47都道府県は維持できない。」「三大都市圏も終わりを迎える」となかなか刺激的だ。
私の地元では流山市(千葉)が人口増加都市として脚光を浴びている。隣の柏市が羨望の思いからか駅周辺に居住者を集めようと市民そっちのけで不動産デベロッパーと開発を画策している。しかしそんな「努力」も日本列島を蝕む少子高齢化の下ではむなしいと著者はいう。いまや地域間で優劣を競っている場合ではなく、既存自治体を前提として中心部に人口集約を図るコンパクトシティ構想も的外れとなり、北海道で「札幌独り勝ち」といわれるほど人口を膨らませている札幌市も道内の周辺自治体が疲弊しきった時点で単なる高齢者の集積都市になり人口減少が始まり、全国から人口を吸い上げている東京都ですら周辺部から一気に高齢化が進行していくという。
こうした話を、統計をもとにして地域ごとの分析をくわえて展開しているからなかなか説得力があるのである。賛否は別として、日本列島がどうして生き残るかという問題提起は傾聴に値すると思う。
2025年から、中小零細企業が大幅に減り、大企業の生産にも打撃を与えるとか、自治体を維持する職員が集まらなくなる、などの指摘も興味深かった。
気を付けてみれば、いまでもいろんな現象が始まっているのである。
税経センターグループ 顧問 新山 晴美