2018年11月第146号|4-1|あきない遠眼鏡~「医者の不養生」は通用しなくなる?~|

40歳の頃、交通事故で3年間療養生活を送った。(そのとき商売替えを考えた。)某大学病院に3年間で3回入院していた。今も変わらないと思うが医者になりたての一年生が担当医となって、めったに回診に来ない偉い先生に替わって朝に晩に病室に来ていた。「いつ寝てるんですか?」「家に帰らなかったんですか?」という世界である。その後、世間では「研修医の過労死問題」が大きく取り上げられた。

10年以上前、鎌ヶ谷にできた大病院の院長先生と話す機会があった。「家に帰るのは月3回くらいかな?女房が毎週、着替えを届けにくるよ」と辛そうでもなく言われていた。「監督署も来ないよ。『だって先生は医者なんだから、自分の健康は自分でわかるんでしょ』というのが彼らの言い分だ、」というのがそのときの言葉だった。

私が職業柄観察しているのは、職員が何百人いても労働安全衛生委員会が開催されない、だけど医療安全の面では「ヒヤリハット事故の事例上げ」を熱心に取り組む病院だった。

今回の働き方改革の議論では「医者の世界も例外にしない」ということが打ち出された。(時間外労働の上限規制は5年間先延ばしされたが) そればかりか、これまでアンタッチャブルだった病院に監督署の臨検が入り始めたのである。

「医師の世界は特別だよ」「医師には応召義務がある」「患者は放っておけないだろ」と言っていた病院側も(内心は肝をつぶしつつ)遅まきの対応を始めつつある。

私が購読している「〇〇医療経営」誌の11月号の特集は「今日から始める病院の働き方改革」である。 特集の「まとめ」で語られているのは「法律を遵守することは当然という考え方にあらためる」「医師の職業倫理を押し通すことはもはや通用しない」「まずは医師の勤務時間をタイムカード等で把握しておこう」という神妙な言葉である。

税経センターグループ 顧問
新山 晴美

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