この稿は6月の終わりに書き始めたのですが、その後の展開の速さと言ったら。どの時点で書いても情報が陳腐になってしまうので先送りし、感想のみ簡潔にまとめました。
歴史的と言われた米朝会談と並行して大国間の貿易戦争が勃発しました。3月25日の対中国25%の関税通告に始まり、中国やEUさらには日本への追加関税が発表されました。これに対し、中国もEUも対抗措置で応酬して7月に入ってもおさまるどころではありません。象徴的な事件としてはオートバイのハーレイ・ダビッドソンが、この追加関税に音をあげて製造拠点を欧州に移すことを発表するにいたったことが上げられます。
注目すべきは20世紀の貿易戦争とは異なり、国際間分業が発達している今日では単純な貿易戦争では終わらないことです。たとえばアップルのスマートホンの輸出大国は中国ですが、米国が中国の輸出に関税で対抗するとスマホの売れ行きは落ちますが、組み立て国、中国が受ける打撃よりも、スマホの部品を供給する日本、韓国、米国、ドイツのメーカーが受ける打撃の方がはるかに大きいということらしいのです。
工業製品を各国で分業して生産する現在の「グローバルサプライチェーン」においては、複雑にからみあった貿易構造が単純な貿易戦争をしかけることができないというわけです。
それにしてもこの一大事態に、静か過ぎる日本の政界、経済界はどういうことでしょう?対岸の火事を見物するような冷静さだ。親分のツイッターには反論しないのか?それとも口をはさむほどの力がないのか?
不気味なのは、レア・アース(希少金属)を大量に輸出する中国の出方です。
税経センターグループ 顧問 新山 晴美